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放送日時 2017-09-08

2017-9-8OA 「京仏具店の旅の宿」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2017-09-08 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
              野村正樹

パートナー)  橋本沙抽里 

音声

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先日、下京区東本願寺界隈にある、一件のゲストハウスを改装する機会に恵まれた。

「田中極楽堂ゲストハウス」というその旅の宿は、その屋号が示すとおり、大正10年創業の老舗

仏具店「田中極楽堂」が運営する、新・形態のゲストハウスである。

このあたりは、七条通りを中心に、古くから多くの仏壇仏具店が軒を連ね、全国各地・各宗派から

たくさんの信者が訪れている。また、京都駅北側エリアには古くからの旅館も多くあり、そういっ

意味で、「仏具店×旅の宿」といった今回の組み合わせは、興味深い。

入り口には大きな仏像がライトアップをされて幻想的に安置され、施設全体のシンボルとなっている。

館内においても、さまざまな仏像や屏風が全体的にモダンにディスプレイされ、海外から訪れる観光

客に仏教のもつ世界観をなんとなく感じてもらうることのできるような演出がなされている。

さらには、工事中に偶然発見されたという、オーナーの祖母が、幼少期に毛筆で書いた明治時代の

「繪集帳(お絵かき帳)」を玄関ロビー部分に展示。一枚一枚の絵の美しさをうまく生かしながら、バ

ンス良く配置構成を計画することにより、その鮮やかな色彩と毛筆で書かれた柔和な雰囲気が来訪者

の目を楽しませるよう、工夫がなされている。

海外の人々にとって、私たちが親しんでいる仏教の世界観は、日本的もしくは東洋的なものとして映る

こともあり、むしろ新しく感じられる。

屋上には京都タワーを至近で望むことのできる、屋上テラスも計画。共有の談話室やキッチンとともに、

他のゲストとも積極的に交流ができる宿泊施設としての設計も行っている。全6室からなる小さなゲスト

ハウスの改装設計ではあったが、さまざまな工夫を行い印象に残るプロジェクトとなった。