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放送日時 2016-06-24

2016-6-24OA 「モダニズム建築とアール・デコ

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2016-06-24 13:15

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「モダニズム建築とアール・デコ」

写真は「きょうと空間創生術232」でも紹介した京都市山科区御陵に建つ「栗原邸(旧鶴巻邸)」

にある2階の内部空間。玄関ポーチの上に大きく張り出した丸みのある造形を室内にうまく取り込
みながら、サブリビングともいうべき居心地のいい、くつろぎのスペースが構築されている。
全体はアール・デコ様式のすっきりとしたデザインでまとめられ、写真に写るチェアとテーブルは、
クッションも含めて、1929年(昭和4年)竣工当時のものが、そのまま現在まで87年間保存され続けて
いる。アール・デコとは、20世紀初頭に流行した装飾の様式であり、19世紀末に流行した植物などを
思わせる曲線を多用した有機的なデザインであるアール・ヌーヴォー様式に対して、幾何学図形を
モチーフにした記号的表現や、原色による対比表現をその特徴としている。
幾何学的な意匠を組み合わせながら、落ち着きのある空間を実現しているところは、建築のみならず、
客船や家具・服飾・舞台デザイン・音楽・絵画まで多岐にわたり活躍した建築家・本野精吾らしい設計
となっている。
無装飾で抽象的な形態を用いながら機能美を追及するモダニズム建築と、アール・デコとのデザインの
融合により、独自の空間を形成するに至った「栗原邸(旧鶴巻邸)」。20世紀初頭、世界が新しい建築
を模索し動いていたこの時期。
過去の様式建築からの脱却をひたすら目指した建築家・本野精吾が追い求めた空間がこの住宅には内包
されている。