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放送日時 2018-08-08

2018-8-10OA  「サウジアラビアに学ぶ『涼』の工夫」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2018-08-10 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
        野村正樹

パートナー)  藤田瞳

音声

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先日、サウジアラビア西部にある、中東有数の世界都市、「ジッダ(Jeddah)」を訪れた。
イスラム教の聖地「メッカ」の近くにあり、毎年、大巡礼の時期には、約200万人もの人々が訪れ続け、
巡礼者の中継都市としてにぎわう。サウジアラビアの首都リヤドに次ぐ第2の都市として、現在約300万
人もの 人々が暮らし、経済都市としても、日々発展を続けている。

 紅海に面したジッダの歴史は古く、約2500年前から漁村があり、以後、主要港湾として栄えてきた。
砂漠地帯であるため真夏の日中最高気温は50度近くにも達し、さらに海に面していることもあり、年中を
通じて非常に蒸し暑い気候が特徴的である。そういった意味においては京都盆地特有の、夏の蒸し暑さと
似通っている。現在のように空調設備もなかった時代、京町家と同じく、いかに涼しく住まうかが人々に
とっては快適な住まいの最大の関心事であり、また住宅にとっての必要条件であった。

 住宅の壁は断熱性能の高い軽石の一種「さんご石」でつくられており、壁面は白色に色づけられている。
また、中庭と通路を巧みに組み合わせ、少量の風でも、涼を感じることのできる工夫がうまくなされている。
住宅内には京町家における坪庭と同様に、緑や影をうまくとりこみながら、自然を利用したクールスポット
ともいうべき場所が計画され、高温多湿な気候の条件下にあっても、豊かな暮らしが営めるよう、先人の
知恵が取り入れられている。

 遠く離れた、京都とジッダ。時を重ねて考え出された人々の暮らしの知恵が、それぞれの街に今も大切に受け継がれていると感じた素敵な旅のひとときであった。