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前半のコーナー”ただいま参上”/株式会社 山本合金製作所 山本富士夫さん
テーマ「金工の職人さん」 「魔鏡」〜誰もが感嘆する不思議な鏡
私の肩書きは鏡師になります。現代のガラスのものではなく、金属の鏡を作っています。歴史で習った三角縁神獣鏡や海獣葡萄鏡などをイメージしてください。
主に『御霊代鏡(みたましろきょう)』『御神宝鏡(ごじんぽうきょう)』『前立て鏡』などを神社さんにお納めするのと、個人でご興味を持ってお求めいただくという二つのケースがあります。
私が4代目、息子が5代目となります。どの業界でも後継者は減っています。単純にいえば、仕事の量が多ければ続けていけるわけですから、伝統産業で作られるものの価値を知り、どんどん入手していただきたいです。私たちもいろいろと考え、手頃な値段でお求めいただけるコンパクトな手鏡や、守り本尊さんのペンダントなども作っています。
守り本尊さんのペンダントは魔鏡になっています。魔鏡とは、見た目はまったく普通の鏡で、光をあてて反射したところに絵が現れる不思議な鏡のことです。これを明治期にマジックミラーと英語で表現し、日本語直訳で「魔鏡」と呼ばれるようになりました。日本で魔鏡を作ることができるのは、うちだけです。
金属の鏡なので空気に触れると酸化して曇ってきます。曇ったら削って磨きます。特に古い鏡は貴重なので何度もなんども磨かれてだんだん薄くなり、しまいには裏の文様が現れるということを昔の職人がたまたま発見したのが魔鏡の始まりのようです。魔鏡の中には、十字架が現れる隠れキリシタンのものもあります。
2014年に首相がバチカンを訪問された際には、ローマ法王直々のご所望で、うちで作らせてもらった隠れキリシタンの魔鏡を献上しました。
東日本大震災の津波で残った一本松にまつわり、流失した陸前高田の今泉天満宮さんを再建するための寄付を募る動きの中で、奉納する鏡の発注をいただきました。
神社の建物がまだですので、今は『みやこめっせ』地下の京都伝統産業ふれあい館に展示しています。これも魔鏡です。ボタンを押したら光が当たって絵柄をご覧いだける仕組みになっていますので、百聞は一見に如かず、ぜひ行ってみてください。