三条通のクィーン・アン様式
京都市の三条通にあり現在は「京都市文化博物館別館」として使用されている「旧日本銀行京都支店」
明治39(1906)年に建造された、煉瓦(れんが)造り2階建スレート葺(ふ)きの両翼に棟屋が ついた
美しい建物である。当初、日本銀行京都出張所は明治27(1894)年に東洞院通御池上ルに 開設された
のであるが、業務拡張により、この地に移転することとなった。以後、昭和40(1986)年に現在の河原
町通二条に移転するまで、60年間にわ たり日本銀行京都支店として使用されていた。
その美しい外観は、三条通に面して左右対称に設計されており、赤煉瓦と白い花崗(かこう)岩の横縞が
見事な調和を見せる美しい意匠デザインは、19世紀後半のイギリスの建築によく使われたクィーン・アン
様式(別名フリー・クラッシック)である。
ビクトリア王朝の中期にイギリスで生まれ たクィーン・アン様式は、曲線を多用することでも知られ、
優美で軽快なプロポーションでありながら も、落ちつきのある雰囲気が、町並みにうまく調和している。
日本が近代化を目指した明治時代。まず、建築様式において主流とされたのがイギリス系の建築であり、
設計者の辰野金吾自身も、ロンド ンに留学しイギリスの影響を強く受けた人物であった。
「京都市文化博物館別館」では、先日、私たちの所属する(社)日本建築家協会近畿支部京都地域会が
主催する建築家作品展が開催された。「受け継がれる建築の佇(たたず)まい」~地域の特性を生かして~」
と題した展示会には、普段私たちが考えている”建築”のありかたを展示し、4日間の会期中延べ 1200名余の
方に来訪いただいた。”時”とともに存在し続ける”建築”。”建築”を単なる形では なく大切 なものとして捉
え直したとき、そこに人々の幸せが見えてくると思うのである。