出演者情報
パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
野村正樹さん
「地鎮祭のよもやま話」
新しく建築工事をはじめるにあたり、ほとんどの現場では工事の着工に先立ち「地鎮祭」が
執り行われる。その土地を護っておられる神様を祝い鎮め、工事の安全と無事の竣工を願って
催行される儀式である。先日も、東山区祇園で新しく建設される宿泊施設「花とうろ stay
祇園レジデンス」の地鎮祭に参加する機会にめぐまれた。
仕事柄、今までに数多くの地鎮祭に参加をさせていただいている。地鎮祭の多くは、氏神様や
近隣の神社より神主様をお迎えして神式でおこなうことが一般的であるが、他にも今までに
仏式やキリスト教式・金光教式の地鎮祭にも参加をさせていただいたこともある。
また、その歴史は古く「日本書紀」には持統天皇5年(西暦691年)藤原京の造営に際して
「新益京(しんやくのみやこ)を鎮め祭らしむ」との記載があり、1300年以上も前から、
このような儀式が行われていたことがうかがわれる。
写真は代表的な神式による地鎮祭の祭壇の風景。海の幸・山の幸・塩・米・酒等を神様にお供えし
玉串を奉げ拝礼を行う。特徴的であるのは、「地鎮の儀」とよばれる儀式で、「エイエイエイ」
という掛け声とともに、設計者が鎌(カマ)で盛り砂上部にある草を刈り、その後、施主である
お客様が鍬(クワ)で盛り砂に穴を開け、神主が土地のお守りとなる「鎮め物(しずめもの)」
を埋設したのち、施工者が鋤(スキ)で穴を埋めるという儀式である。
凜とした静けさのなかに響くその掛け声は、いつ聞いても心地がよい。地域によって多少の違い
はあるものの、私にとっては、これからはじまるプロジェクトの無事の完成を祈る神聖な儀式と
なっている。