出演者情報
パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
代表取締役 野村正樹
先日、下京区にある「ひと・まち交流館 京都」にて開催された京都市景観シンポジウムに参加した。
「景観デザイン基準の進化に向けて」という副題が付けられた京都市景観デザイン協議会と京都市が
主催するこのシンポジウム。07年9月より施行された京都市の新景観政策についての取り組みやその
成果を検証し、更なるデザイン基準の進化を考えるというものであった。
新景観政策についてはいまだ不完全な部分も多く、設計実務の現場でその運用を行っていくと市民感覚
からずれていると思われる部分も多いといわざるを得ない。
一昨年、山科区音羽にて計画した個人住宅にてこんなことがあった。その外観デザインを協議しようと
京都市へおもむいたところ、この地区は北区にある船岡山公園にある「視点場」から「大文字」を
眺める方向へのデザイン規制を受けるという。「大文字山」の裏側にある建物であるにもかかわらず、
その外壁の色彩等について大文字に調和したデザインとしなければならなかったのである
。当時、私は市の担当官に「船岡山から山科が見えるか?」という当たり前の議論を持ちかけ、
景観条例の立法趣旨やその理念について話し合いを行ったが、議論は平行線をたどった。
「一緒に船岡山へ登って、山頂で話をしましょう」とまで市の担当官に熱意を持って提案したが
、条例の運用を覆すには至らなかった。
あれから、2年。先月、京都市景観デザイン協議会がとりまとめた、「景観デザイン基準の進化の
取りまとめ(案)」には、船岡山公園からの眺めについて山科区における区域指定の見直しが検討
されている。そう、船岡山からは見えないのであるから。
更なる新景観政策の充実に向けて、市民の生の声を京都市に届ける大切な役目が私たちにはある