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放送日時 2017-12-18

2017-12-22OA 「重要文化財 瀧澤家住宅」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2017-12-22 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
              野村正樹

パートナー) 橋本沙抽里

音声

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義経伝説でも有名な京都市左京区「鞍馬」。古来より、鞍馬は丹波や若狭と京都との間の物資の

中継点としても発展を遂げ、街道沿いには、山間の良質な薪炭などを扱う問屋等も軒を連ねていた。

付近一帯には市中と変わらない形式の町家が多く立ち並び、情緒ある町並みが今もなお続いている。

先日、叡山電鉄鞍馬駅から鞍馬街道を500メートルほど北上したところにある、「瀧澤家住宅」(写真)

を訪れる機会に恵まれた。「瀧澤家」は旧炭問屋と伝えられている町家であり、国の重要文化財に指定

されている。祈祷(きとう)札には、「寶暦十庚辰四月廿五日」と記され、今から約250年前の宝暦10

(1760)年に建築されたことが知られている。現在、京都市内にある重要文化財である町家は他に

下京区にある「角屋」と「杉本家住宅」、そして中京区にある「小川家住宅(二條陣屋)」の3件しか指定

されていない。

建物の両妻に卯建(うだつ)をかまえる格式のある外観は、江戸時代後期における標準的な京町

家の様式を現代に伝える貴重な文化財となっている。間口4間半のうち西側2間を通り土間とし、

その東側に一列3室の座敷が計画されている。通り土間形式である京町家の例としては現在知られ

る京都市内最古のものであるといわれている。2階部分には、通りに面して2室の座敷と、屋根裏に

薪炭置き場が計画されており、辷(すべ)り戸天井を引き開けて、箱階段で上階に上る構造となって

いる点は興味深い。

洛中の町家のほとんどが、過去の大火によって失われた中、近世京町家の典型事例として鞍馬の

山中に「瀧澤家住宅」は残り続け、私たちにその姿を伝え続けているのである。