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放送日時 2015-03-07

2015-3-7OA 「浪江焼麺太国」の活動〜なみえ焼きそばで心の復興を

番組名:きょうと・人・まち・であいもん

投稿日時 2015-03-07 14:30

出演者情報

一般社団法人 福島県建築士会 双葉支部 八島貞之さん

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 2011年3月11日の震災のときに、鉄骨業を営む私は工事のため現場に出かけていました。波打つ道路、大きく揺らぐ建物、倒壊した建物から立ち上る埃で周囲が真っ白に煙る様子を目の当たりにし、とにかく家族と会社が心配で浪江町に戻りましたが、翌日12日には原子力災害のために避難を余儀なくされました。現在は、両親が郡山市、妻と子どもたちはいわき市、私は仕事の関係で南相馬市で暮らすという三重生活です。

【浪江焼麵太国(なみえやきそばたいこく)の誕生】
 私が地元商工会議所青年部の部長を務めていた平成19-20年当時は、リーマンショックの影響で仕事を取り巻く状況はたいへん厳しく、そんな中、この浪江町を盛り立ててどうやって生きていくかということについて青年部の仲間たちと議論を重ねていました。仲間の色々な意見から、当時始まったばかりのB-1グランプリに目がとまったのです。B-1グランプリとは、食べ物を売るためのグルメイベントではなく、ご当地グルメによるまちおこし活動のイベントです。そして私たちは、子どもの頃から慣れ親しんだ地元の極太麺のなみえ焼きそばをひっさげて「浪江焼麺太国」を立国しました。

【震災後の活動】
 まちおこし活動を通して生まれた仲間とのつながりは何物にも代え難いものです。震災後の避難生活で住む場所はばらばらになってしまいましたが、浪江焼麺太国の活動を続けることが町の人の心の復興に少しでも寄与出来ると信じ、ついに2013年には第8回B-1グランプリにおいてゴールドグランプリを受賞することができました。浪江焼麺太国の太王(だいおう)としてナポレオン風の衣裳をまとい広報活動をしているのが私です。去年の建築士会全国大会福島大会では、その姿で全国の方々にお会いしました。

【故郷への思い】
 このようなまちおこし活動に携わる事で、いつかは故郷の町に帰りたいという思いが強くなる反面、浪江町に帰ることはあきらめて、家族みんなでまったく違う土地での新しい生活をはじめた方がいいのではないかという考えも実は捨てきれていません。また、本来の鉄骨の仕事が減る中で、土木作業や除染作業という慣れない仕事に従事しなければならないこともあります。除染作業は被災した自分たちがするべきことではないと抵抗を感じつつも、心を込めて故郷を除染することで、自分たちは無理でも次の世代がここに戻って来られるかもしれないとの思いが作業の後押しをします。高齢の方は故郷に帰りたいと望み、比較的若い世代は新しい土地で新たな生活を望むという傾向があるようです。震災直後から建築士会として行っている被災家屋の罹災証明発行のための調査では、家を取り壊して他所に移りたいので罹災証明が欲しいという相談がほとんどであることも事実です。故郷を思う気持ちは同じでも、このようにそれぞれの立場や考え方の違いで将来への足並みは揃いません。

【皆さんへ】
 地震国であり、且つ全国に55基の原子炉を持つ日本において、すべてのコミュニティを壊す原子力災害は決して他人事ではないはずです。その意識を皆さんもしっかり持って欲しいと願います。復興の一端として、3月6日に常磐自動車道が全線開通しました。帰還困難区域を貫く国道6号線も自家用車で走ることが出来ます。是非皆さんに直接その目で福島の今を見に来てほしいと思います。そして福島を忘れないでいて下さい。

「浪江焼麵太国」ホームページ