出演者情報
ゲスト:京都文化博物館 学芸課学芸員 西山剛さん
聞き手:内藤郁子
京都文化博物館を核とした地域活性化事業
京都文化博物館学芸課学芸員 西山剛さん
学芸員が文化博物館で何をしているかというと、おもに展覧会の開催のための企画や調査などが大きな柱です。美術・歴史・広報・民族学・映像、それぞれの分野に応じて、その蓄積した学問的なスタンスや研究的技術を用いて調査を重ねながら展覧会を開催しています。
博物館のイメージというと、「博物館行き」という言葉があるうように、物事が停滞してしまったりすると、あれはもう博物館行きだと言ったりしますが、今は、「交流」ということが一つのテーマになっています。展示物や作品など博物館にあるものを通して、人と人が結び合うような繋がりを提供する場であるというのが、今の博物館の考え方です。
そういう中で今、「地域との連携」ということを、非常に大きな柱として位置づけています。これは国を挙げてのプロジェクでもあり、「地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」という国が補助金を付ける形で、地域と博物館・ミュージアムとの関わりを促進させようというものです。京都文化博物館は京都全体を見ようとしている博物館ですが、一番最初にきっちり向き合わなければいけないのは、お膝元である地域です。三条通と姉小路通を中核的な道と考えて、2年前からそれぞれに地域で活動している方々と話をしはじめました。
昨年度は、先端事例として、滋賀県の博物館の学芸員さんに来て頂いたりとか、あるいは北海道大学から観光学を専門にされている西山徳明先生に講演して頂いたりとか、積極的に遠隔地と結ぶことで、いろんな価値観を見ようというふうに考えてやってきました。
そこで、「エコミュージアム」という考え方があるのですが、エコというとエコロジーとか節約や環境に結び付けてしまいますが、そのエコとは違って、ここでは「生態的な」という意味なんです。つまり、それぞれの地域が持っている歴史的な価値、あるいは美術史的な価値をもつものを、博物館に一堂に集めて収蔵してしまうのではなくて、現にあるその場で価値を認めながら高めあって、利用していこうという考え方です。その手法を取り込んで、地域の文化資源を、一緒になって、この一緒になってというところが大事なのですけれど、博物館だけでなく地域の方々と活動を重ねながら発掘して、それを展覧会とかシンポジウムなどの形で皆さんに見て頂く、というようなことが今年のテーマになっています。
そこから出てきた方法論やアプローチの仕方みたいなものをどんどん広げていって、最終的には、京都全体をそういう形でエコミュージアムに育てていけたらいいな、と思っています