出演者情報
熊本県建築士会女性部会長
持田美沙子さん
熊本大地震とその後のまちづくり
現在、五木村役場農林課で5年間の任期付職員として働いています。五木村は川辺川のダム建設がなくなり人口が6000人から1200人に減りましたが、なんとか村を再生していこうと県から補助をもらいながら建物や観光地としての整備に取り組んでいます。今年で5年目ですが、当初は廃校を利用した高齢者施設の工事監理を担当していました。五木村は森林が96%あり山の木を活かすことを頭に置きながら活動していて今年1月から建築課から農林課に移りました。
地震の起こった4月14日は五木村で被災しましたが、震度4程度だったので棚のものが落ちない状況でした。16日は熊本市に戻って応急危険度判定に行くことになっていたので15日の遅くまで部屋を片付けていたところに本震がきました。本棚が倒れないように抑えましたが、これは潰されると思い慌てて柱を握りしめて、その場をしのぎました。その後、五木村は被害が少なかったので支援側の動きを始めましたが、農林課としては一昨年から木の村「五木」をブランディングしていて組立式のベッドを熊本県立大学と一緒に開発していたので地震直後に材料を調達して5月の連休明けに避難所に20台持っていきました。
建築士会として応急危険度判定や住民への無料相談会をしていましたが現在は復興住宅の設計に動きが移っています。県で復興住宅のモデルを益城町に3棟つくることが企画され建築士会で1棟応募しました。また五木村でも以前から葉枯し天然乾燥材を使って産直住宅の流れをつくり協定を結んでいる方に木材をお売りする取組みをしていたので、製材所や施工業者、設計事務所、流通等のグループがありモデル住宅を建てる状況ができていたので応募できました。
住民に対して建築士会では決まった場所で相談会を行なっていましたが、個々の場所での相談会が大事だと思います。また福岡県の建築士が4月末から熊本市内で復興支援ハウスを開いて相談会をされましたが女性部会として数回参加させていただき、その会社の方法を学んで別の場所でも開催しています。また150年経つ古民家の調査もしましたが罹災は全壊扱いですが、中に入ると柱は大きいし躯体は壊れていないので改修する方向で相談にのっています。今回、地震で木造住宅がたくさん倒れたという報道がされましたが今後、家を建てる方が木造は嫌だと思う方が結構増えているそうです。しかし壊れたのは木造のせいではないと思います。できれば、いろんな意味で地域の木を使って復興して頂けたらと思っています。なぜなら、それぞれ地域の特徴があると思いますが、その景観がすごく大事だと思います。「住まう」というのは色んな意味が入っていて地域の中での「つながり」も入っていると思います。地域のことをよく分かった大工さんが地域の木で建ててメンテナンスもやっていけるような家が良いと思います。今は解体の方向に向いていますが、解体して建てるには相当費用もかかるしゴミも出るので、そういうやり方はまずいし修復して住めるのなら住んでいただきたいと思っています。みなさん早く仮設から出たいと思っておられると思いますが、その際、どんな復興住宅がいいのかを我々建築士がアドバイスしていかないといけないと思います。益城町に3棟のモデル住宅が建ちますが、それを参考にして頂いて自分たちはこういう家がいいんじゃないかと考えて建てていただけばいいと思います。また五木村でも施工グループによるプラン集ができるのでそちらも見ていただいて五木の木を使っていただければと思っています。