出演者情報
福知山 治水記念館 芦田 卓(あしだ たかし)さん
福知山は由良川という一級河川があり、緑があり、今も自然豊かなまちです。
この由良川は、昔は人や荷物を運ぶ水運に利用され、福知山経済の発展の礎となる大変重要な川ですが、一方では大変な暴れ川で過去に度々大きな水害を起こしております。明治29年と40年に起こった水害では、まちは壊滅状態に陥りました。その後も水害は多いのですが、特に昭和28年(1953年)9月25日の台風13号により堤防が決壊し福知山の市街地中心部のほとんどが2階まで浸かるという壊滅的な大水害が起こりました。
この被災から50年を機に、水害の恐ろしさを後世に伝えるために国土交通省がこの治水記念館をつくりました。開館予定だった平成16年にふたたび大きな水害があり翌年の17年に開館しました。
平成16年10月20日の台風23号は立ち往生したバスの屋根にのり乗客が救助を待っている様などが新聞に大きく取り上げられましたので、皆さんのご記憶に残っていると思います。
その後も、台風や大雨で由良川の水位が上がることがありますが、現在は堤防に守られています。しかし、堤防をここまで高くすれば大丈夫という事は決してなく、自然の驚異はそれを上回ってしまうと言われています。
実際に平成25年にも豪雨災害に見舞われており、その時は堤防からバケツで水が汲めるぐらいまで上がりました。
この記念館は、明治13年に建てられた福知山の商家(呉服屋)で、町家の保存ということで、市が修復しました。
当時から水害がある度にタカと呼ばれる滑車で荷物を小屋裏に上げ、被害を最小限にする工夫がなされており、柱や欄間、摺り上げ戸も従来のものです。
外から見ても、うだつや虫籠窓、紅殻格子、蔀戸が残されており、この建物自体が福知山の歴史的資料となっています。
そのため、社会科の「昔の道具」という授業で使われることも多く小学生が見学にやってきます。その際も、私たち管理をしている柳菱クラブ(地域の自治会から任意で集まったもの)から、実際に水害を体験している者が語り部となり「こう行動しなさい。」ではなく、災害の恐ろしさを伝え、昭和28年当時呉服商を営んでいた一家の様子を中心に被災された人々のお話を元に水害の恐ろしさを再現した映像を見てもらっています。
水害の備えがあり、少々の浸水には慣れていたので2日間雨が降り続く中でもゆったりと構えていた一家が、時と共に上がる水位や電話の不通、対岸の家を丸ごと流す濁流、まるで地獄絵図のような様子を見て、次第に焦りと不安に苛まれていく様子を再現しています。自然の驚異は人の想像をはるかに超えるものと思い、大切な命を守るよう早めの避難、常日頃からの心構えが大切だとこれからも啓発していきます。