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京都市消防局予防部予防課 文化財係長 勝田 正一さん
京都市消防局予防部予防課で文化財係長をしています。予防部予防課は、一般的には火災予防、防火防災についての仕事をするセクションです。文化財係長は全国的にも珍しいポジションで、文化財の火災予防や防災対策について専門的に考え、「みんなで文化財を守っていく」ということを実践していくポジションです。
- 京都は日本の他の地域と比べて非常に文化財の多い場所だと思うのですが、京都市内にはどれくらいの数の文化財があるのでしょうか?
数をあげ出すとキリがないのですが、国宝では全国の約19%、重要文化財だけでみても約14%がありますので、実質全国の2割近くが集まっている、常に文化財の保護保全、防火防災について考えていかなければいけない、代表的な都市だと思います。
- 京都市消防局では文化財防火について先駆的な取り組みを多くされているとお聞きしていますが、文化財から火災を起こさないための取り組みについてお教えください。
火災を起こさないためには、とにかく火の使用を最小限に抑えるというのが当然一番にあると思います。そこで京都市では、国宝や重要文化財のある建物の境内や区域内では、原則火を使ってはダメ、喫煙はもちろんのことたき火とか裸火を使うのは禁止という場所を、市内の多くの社寺仏閣で指定区域として設けています。
そして、そういった場所には国内外の観光客の方も多く来られますので、木製の「制札」を掲げて、2か国語やピクトグラムで分かりやすく案内しています。
また、1月と7月に1週間ずつ文化財防火運動を実施しており、文化財や防火について考える期間を設けて、消防が文化財に関係する人や地域のみなさんと一緒に訓練をしたり、また、査察をさせていただいたり、地域の方々も一体となって防火に取り組んだりしています。
- 文化財防火では、社寺仏閣などの施設や、生活をされている方の事前協力なしにはなしえないかと思います。
一般家庭でしたら、人命優先、それから建物の火を消すという流れになるのですが、文化財の場合、そこに重要な美術工芸品で運び出せるものは搬出する、ということがプラスされます。事前に多くの社寺で搬出計画を作っていただいていますが、消火活動等には人手が足りないので、地域の方々と、関係者の方々と、みんなで協力して文化財を守っていく取り組みを常日頃からしています。
どんなに防火防災に努めていても、火災は少なからず発生してしまいます。それは文化財対象物であっても例外ではありません。どこの施設のどの建物、棟に貴重な文化財があるか、施設の方々は理解していても消防隊が把握することは難しいので、平成23年から「文化財セーフティーカード」を、消防局では社寺の方々と協力して作っています。また、制度が絵に描いた餅にならないように、文化財防火運動等で文化財セーフティーカードを用いた訓練を行っています。
- 文化財防火に対する市民への取り組みについて教えてください
日頃から社寺等を訪れる機会の多い観光ボランティア、バスガイド、タクシー運転手、こういった方々にも防火防災の知識を身に着けていただいて、万が一火災を確認した際の初期消火や応急措置ができるように「文化財防災マイスター」の養成を行っています。
文化財を守る消防設備や施設といったハード面については、消防局が責任をもって査察などで確認させていただいていますが、市民の方々、観光客の方々、市全体の文化財愛護・文化財防火の意識の持ち方を高めていくのも文化財係長としての使命だと感じています。
- 文化財を次の世代に引き継いでいくための取り組み
大人も子どもも一緒に文化財に親しみ、防火・防災意識を高めていただく取り組みとして、昨年「みんなDE文化財防火スクール」を開催し、今年も開催する予定です。
市民にとって身近にある文化財について、まずは好きになってもらうとともに、放水銃などの消防設備に触れたり、修繕の現場を体験できるような機会にしたいと考えています。