出演者情報
京都上下水道局 総務部総務課 協働推進係長
阪倉 渉(さかくら わたる)さん
「京都の歴史を支えた琵琶湖疏水 舟運復活」
琵琶湖疏水は、琵琶湖の豊富な水を京都へと運ぶため今から約130年前に造られた人工の水路です。
明治維新の後首都機能が東京へと移り、一時「狐や狸の棲み処(すみか)」と言われるほどに衰退してしまった京都の産業を振興しようと計画されたのが、琵琶湖疏水の建設でした。
当時国内最長のトンネル工事や度重なる計画変更など、建設への道のりは苦難の連続でしたが、疏水ができたことで琵琶湖から京都市内まで物資を運べるようになり、水力発電によって市内に電気が供給され、更には第二疏水ができて浄水場から水道の供給が開始されるなど、琵琶湖疏水は京都の近代化に大きく貢献しました。
疏水のトンネルの出入口には、意匠を凝らした門構えの中に伊藤博文や山縣有朋など明治の元勲達から送られた言葉が遺されているほか、哲学の道や蹴上インクライン、南禅寺水路閣など、疏水には歴史・景観・産業遺産といった要素が揃っています。
疏水における舟運の復活は、「琵琶湖疏水建設の意義を改めて知ってほしい」「新しいコンテンツとして沿線地域の更なる活性化に結び付けたい」そのような想いで関係者が立ち上がり、検討を進めてきたものです。
復活に向けての課題は大きく2点あり、一つは,半分がトンネルという航路で、いかに魅力を感じていただくか、もう一つは今後継続的に実施していくためにいかに採算性を高めるかという現実的な問題がありました。
魅力の点については、沿線の見所を案内できるガイドを養成し、その場で説明してもらうことにしたのですが、様々なエピソードを交えながら疏水の魅力を語ってくれるガイドは非常に好評で、今でも大きな魅力となっています。
また、水路の幅は非常に狭く流れが速い。深さも1.5mくらいなので小さな船しか運航できません。そのため、船の座席配置を工夫したり、流れに逆らって進む上り便にもお客さんに乗っていただくなど,乗船の機会を増やす努力を重ねてきました。
2015年から3年の歳月をかけて、春と秋に5回にわたるテスト運航を実施し、少しずつ課題を克服してきたことで、2018年の春に新しい船2隻による本格的な復活を遂げることができました。1年目の運航実績は乗船率98%と驚くほどの結果で、おかげさまで今年も好評をいただいています。
これからも、この船の事業を通じて持続的に琵琶湖疏水の魅力をお伝えしていきたいと考えています。