建築士会活動報告
団地再生研究会 座長 塚本康仁、能戸謙介、橋本華名、藤井匠
聞き手 ラジオ部会 松本匠
2018年に新しくできましたが、きっかけは?
塚本 もともとは青年部会で、八幡市の男山団地に携わる事業がありました。そこから、事業の一つという枠には収まらないような活動もあり、有志で集まって研究会としてやっていこうという話になりスタートしました。
会の名前である「団地再生」の意味をどのように考えていますか?
能戸 「再生」というか、私のように団地で育った人間からすると、残っていって欲しいということの積み重ねだと思います。「再生」というよりは、「持続可能なシステム」を考えていかなければいけない、ということではないかと思います。モノ的に建物の丈夫さとかはもつのでしょうけど、建物よりも制度の方が古くなっているので、どのように活用していくのかを含めて、新しい団地の使い方に向けての制度作りというのが、再生の一つのキーワードなのかなと思います。
現在、団地再生研究会では、「まちだんち」という言葉をあげて考えようとしています。建物の構造体は元気なのですが、住人だけで閉じこもっているのでは活性化しません。そこで小さな経済圏のようなものを作って、お金を払うことによって協力し合える昔の小さな「まち」(シビック・エコノミー)みたいなものを考えています。
おまつりとかイベントをすることもよいのですが、日々のつきあい、必要なモノの流れを作るのが大事だと思います。それでこそ、いろんな世代が関わっていける「まち」になると思います。
藤井さんは研究会になってからの参加ですが、どのようなことに興味を持たれたのですか?
藤井 橋本さんに誘われて入ったのですが、普段設計の仕事をしていると、長く腰を据えて同じテーマに関わることが難しく感じていました。団地再生研究会は一つのテーマでじっくりと考えて活動していけるのと、「団地再生」は今の社会で問題になっていることが縮図として集まっているのではないかと思い、これは研究としてよいテーマではないかと考えて参加しました。
これまでの活動について教えてください
橋本 男山団地での活動がメインですが、「住まいの相談会」を通じて団地の住人さんから、さまざまなお悩みや声を聞きとってきました。分譲団地の場合は区分所有ゆえの重い問題などもあって、研究会として考えていくきっかけにもなりました。地域の行事にも積極的に参加していて、DIY体験イベントでワークスタンド作りなどを行ったり、「やってみようバンド」して演奏したりもしました。
男山団地でDIYを推進している背景には、賃貸住宅の一部で原状復帰義務が免除されていて専有部分の改装が可能になっているからです。専門業者に依頼することもできますが、住人によるDIYも可能です。そのようなときに、基本的な知識やノウハウを知っておいていただきたいということから、私たち建築士が専門的な見地からアドバイスをする活動をしています。
塚本 私は建築士ですが、現場施工がメインで仕事をしています。この業界に入って約30年が経ちますが、DIYという言葉が浸透してきた要因の一つとして、道具や資材の入手が比較的容易になってきたからだと思います。確かにお金さえ出せば道具や資材は手に入りますし、動画共有サービスなどでもDIYを「楽しく簡単に」といった伝え方がされている傾向があります。ただプロが使う工具は、機能性に富む一方で使用法を誤れば大きなケガをする危険性があります。私たちが行うDIY体験では、「楽しい」と感じてもらうことも大事ですが、作業を行う中での危険性も学んだ上で、モノづくりの達成感を味わっていただきたいと考えています。
今後の活動について教えてください
能戸 2月1日に京滋マンション管理対策協議会と協力して、階段室型の団地住民の方との意見交換会を企画しています。それぞれの団地でどのような問題を抱えているのか、どういったことをしていかなければいけないのかということを、一度話し合って整理したいと思っています。