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絵師 廣戸一幸 さん
音声
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「暮らしの中の宗教画」
私の仕事は、お寺や神社の絵画等装飾修復です。
筆と絵の具を使って、天井画や壁画、掛け軸、柱や欄間の彫刻の色付け等あらゆる装飾の修復を行っています。
修復するものは多岐にわたり、屋外の柱などを修復する場合は、傷んだ柱に残っている色を全て落とし、無くなってしまったパーツを別の部材で補う取り繕いをします。その後、膠、若しくは礬水を塗り木の耐久性を高め、漆でさらに保護をし、金箔を貼り、色を付けるという工程を行っています。金箔で縁取られた色は鮮やかさを増し美しいものです。
元々、絵を描くのが大好きでしたが、絵を描く仕事は限られた分野しかないと思ってあきらめていました。でも何かつくる仕事がしたいと広告制作の会社に勤め、そこでデザイナーさんやイラストレーターさんと接するうちに、かつてやりたい事に挑戦していない心残りが膨れ上がってきました。そんな時、知人の店で「チベット仏画集」を見て、そのビビットでエッジが立っている宗教画に衝撃を受け、今も描いている場所があると知り、仕事を辞めて向かいました。当時チベットは政治的な問題で入れなかったのでチベットから流れてきた職人さんが集まっているネパールに入り、そこで先生に出会い宗教画を学びました。滞在費が底をつきかけた時、先生に相談するとお給料がもらえる下仕事をさせてもらえるようになりましが、それがきっかけで他の労働者たちの反感をかい、初めて皆の仏画に対する思いを知りました。「なぜ、日本人なのにチベット仏画なんだ?この歴史背景に対する志があるのか?それならば何も言うことはないが、ないのであれば我々から奪わないでくれ。」と言われ胸に刺さりました。それから日本の仏教のことを学び直すと掘り下げれば掘り下げるほど素晴らしい装飾、宗教画があることを知り、どんどん魅せられていきました。今は歴史に基づく文化に魅了されながら社寺の宗教画を描くと共に、より身近な家庭の日常、例えば肖像画や節句絵等を描いて暮らしに寄り添えるものを制作しています。
【感想】まさに導かれて行き着いたお仕事。緻密なデザインで独特の配色には歴史や文化が詰まっているのですね。柔らかいタッチの肖像画もとても素敵でした。
(渡邉えみ)
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