出演者情報
広河原松上げ保存会 会長 葛西清司さん(右)
広河原松上げ保存会 監事 新谷久利さん(左)
広河原松上げ~歴史をつなぐ山里の火祭り
広河原の松上げは五穀豊穣、無病息災を祈念して愛宕神社に献火する神事として江戸時代から伝わっており、毎年8月24日に行われます。お盆の15日に佐々里峠にあるお地蔵さんを朝早く取りにいってお堂に安置します。
当日、日が暮れると地松をトロギの周りに1200体程つけて松上げ場を浮かび上がらせますが、夜なのでとても勇壮な雰囲気になります。トロギは高さ20mあり、その先につけた笠をめがけて放り上げ松という松明を下から手で回しながら放り上げます。広河原では誰が早く入れられるかを競っていて懸賞金もありますが、1番に上げることは、とても名誉なことです。昔、上がらなかったことがあって、放り上げ松がなくなったので、作り直して神頼みして、川の水で清めてやったら上がったことがあるそうです。トロギに点火したら笠が燃え尽きそうなところで藤づるを切って倒します。倒した後、火に藁や芝をほりこんで火が大きくなったところに2方向から棒を突っ込んで、さらに炎をおこします。松上げは京都市では花脊、久多、小塩、美山等で行われますが、この「突っ込み」は広河原独特です。
昔、白洲正子さんが「かくれ里」というエッセイで広河原の松上げを紹介され、7年前にNHKで鶴田真由さんの案内で全国放送されて観光客が増えました。最近は京都バスがツアーを組んで多くの方が全国から来られ、日程が土、日曜の年は1000人を超えますが、観られた方は感動して帰られます。
昔はこのあたりは農林業で生計を立てていましたが、今は山に入る人が少なくなったので松上げの準備も大変です。地域で藤づるを集めようと思っても集まらない状況で、かろうじて山に入っている人間が、市内の山へ取りに行きますが、人さんの山なので所有者を確認してお断りを入れてから取りに行きます。昔はどの家も山に入っていたので、あそこに行けばあるということがわかったので、各家から1、2本持ってくれば良かったのですが、今はそれができないので各町で責任をもって5本以上集めるようにしています。
若い人は高校からみんな出ますが、松上げの日は帰ってきてくれます。今後、松上げをいつまで続けられるか、どのように若い人に継承していくのか、そこが問題かなと思っています。今、20代の子が3人いるので、その3人を先頭にやっていけるように一昨年から藤の練り方や括り方、笠の作り方を教えながらやっていますが、やる気があるのでなんとかなるかなと思っています。
【感想】
年々、松上げに使う材料が減る中で、若い人に歴史や技術を継承していくことの大切さや大変さが伝わってきました。また多くの人に観ていただくのは嬉しいが伝統行事が観光化されていくことへの危惧もされていました(江坂幸典)