「今週の本のソムリエ」大垣書店烏丸三条店次長 上田尚志さん
「わたしの一冊」 「火花」 著/又吉直樹 文藝春秋
「漫才は……」 笑いとは何か、人間が生きるとは何なのか。
売れない芸人の徳永は、熱海の花火大会で、先輩芸人である神谷と電撃的に出会い、
「弟子にして下さい」と申し出た。神谷は天才肌でまた人間味が豊かな人物。
「いいよ」という答えの条件は「俺の伝記を書く」こと。神谷も徳永に心を開き、
2人は頻繁に会って、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。
吉祥寺の街を歩きまわる2人は様々な人間と触れ合うのだったが、やがて2人の歩む道は異なっていく。
徳永は少しずつ売れていき、神谷は少しずつ損なわれていくのだった。
お笑いの世界の周辺で生きる女性たちや、芸人の世界の厳しさも描きながら、
驚くべきストーリー展開を見せる。