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放送日時 2013-10-24

2013-10-24OA 第5回放送 ゲスト:湯山哲守さん 京極・春日9条の会事務局長、NHK問題京都連絡会世話人

番組名:京都けんぽうラジオ

投稿日時 2013-10-24 07:07

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湯山哲守さん

湯山哲守さん


京極・春日学区「9条の会」と湯川秀樹博士

 おはようございます。私は湯山哲守と言います。上京区の京極学区に住んでいます。相国寺や同志社大学の東隣、寺町通りに沿った地域です。
 2005年1月23日に「平和に生きたい・9条を生かしたい!京極・春日の会」が結成されました。春日学区は京極学区の南側、京都御苑の東に位置します。京極・春日両学区はノーベル賞物理学者でかつ平和運動への熱心な献身者であった、故・湯川秀樹博士を幼少期から育んだ地域です。湯川さんの書いた随筆『旅人』によれば、湯川さん一家はこの2つの学区の中で何遍か引っ越しを繰り返したそうです。
 湯川さんが核廃絶と戦争廃絶を訴えた1955年のラッセル・アインシュタイン宣言に署名されて以来、終生、核廃絶をめざす運動に精力的に取り組まれたことは良く知られていますが、「憲法9条を讃え、その世界化をめざして」世界連邦運動をやられたことは十分知られていません。私たちは湯川さんの志をこの地域で受け継いでいこうと日々活動しています。
 1964年から5年にかけて、今と同じように自民党が強力に「憲法改正」を推し進めようとしたことがありました。そのような情勢の中で、湯川さんは雑誌『世界』5月号に「日本国憲法と世界平和」と題する論文を書きました。『湯川秀樹著作集5(平和への希求)』に収録されています。その中で湯川さんは、「原子爆弾の出現は、物理学者の一人としての私に特別なそして深刻な影響を与えた。それまでは、真理のために真理を探求するという純粋な気持で研究に専念するのが、学問の進歩のために、そしてそれが引いては人類のためにも、日本のためにも、もっとも大きく貢献する結果となるであろう、と固く信じていた。ところが、原子爆弾の出現によって、物理学とヒューマニズムとが切り離された別々のものでないことが明白になってきた。それ以来、私は科学者の社会的責任についてだんだんと深刻に考えるようになってきた。そういう心境にあった私にとって、新しくできた日本国憲法は大いに歓迎すべきものであった。」と述べた後、憲法前文の中から『日本国民は、・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。』という言葉を引用し、「この一見現実ばなれがしていると思われる文章のなかにこそ、未来を洞察する人間の大きな知恵が潜んでいることが、だんだんと明白になってきた」と、高く評価しています。そして、原子爆弾を受けた国民として、「人類の各員が運命の連帯に深く思いをいたし、原子力の脅威から自己を守る万全の方策を案出し、それを実現することに、いままでよりもはるかに大きな努力を払わなければならない段階に入った」として、「人類がその繁栄と幸福とに、もっと直接につながる人類的共同体の実現への大きな一歩を踏み出すこと」を呼びかけました。そして「ラッセル・アインシュタイン宣言が公表される数カ月前に、ラッセル氏からその草案が送附され署名を求められたとき、私はその趣旨に全面的に同感すると同時に、それよりも数年前につくられた日本国憲法を想起したのである。」と続け、さらに「とくに、皆さんもよく知っておられるように、憲法第九条は次のごとく書かれている。」として次の第9条
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
を掲げ、「(アインシュタイン)宣言が戦争の廃絶を呼びかけているのに対して、憲法はすでに日本がみずから戦争を放棄することによってこれに応えていたのである。」と日本国憲法の先駆性・倫理性を賞賛したのです。
 「日本国民は自ら戦争を放棄すると同時に、他の諸国民が政治道徳の法則を守ることを期待し、それによって自国の安全を保持し得ると信じたのであります。」これは1963年に「世界連邦への道」と題した講演で述べた言葉です。
 湯川さんのすごさは「論理の厳密性」です。国連を発展させた「世界連邦」結成の提案がそれを示しています。戦争の廃絶のためには、直ちには世界中の武器を廃棄することができなくとも、その管理を「世界連邦政府」に任せようと提案しました。その「現実性」を日本国憲法前文と第9条の中に見いだそうとしたのです。
 「一言にしていえば『世界連邦は実現されるべきである』という要望と、『それは実現されるであろう』という期待とを背景として、日本国憲法は成立していると考えざるを得ないのであります。」これが湯川さんの出した結論です。

ありがとうございました。