ここから本文です。

放送日時 2015-10-22

2015-10-22OA 宮川経範さん(日本キリスト教団伏見教会牧師)

番組名:京都けんぽうラジオ

投稿日時 2015-10-22 07:10

①平和活動との関わりは?
イラク戦争がはじまったころからです。熊本に住んでいたときでした。牧師という職業にもよりますが、私には子どもが3人おり、子どもの未来を考えるといつまでも平和を保たなければと考え、非戦平和を願う宗教者の会・熊本を立ち上げる結成メンバーの一人として、そのころから関わり始めました。
②宗教者が具体的にかかわる理由は?
宗教者が、この世の問題に関わっているのは、不思議な感がするという方もおられます。何度か「宗教者は黙っていろ」といったような言葉を受けたことがありますが、宗教の意味を考えますと、その不思議に思う感覚が如何に間違っているかが、分かると思います。宗教は、その宗教を信じる者を整えるものです。人は誰でも苦しみや悲しみがあり、悩みがあります。その苦しみや悩みを自分でコントロールできる時、宗教心は表面化しませんが、苦しみや悩みが自分の力ではどうしても解決ができない時があります。例えば、病気。「なぜ私は苦しまなければならないのか?納得できない。」という煩悶(もだえ苦しみ)がありますよね。あるいは死。死を経験した人が誰もいないので、人間には分かり得ない世界です。人は死を間近に感じた時、「神さま、助けて下さい!」と叫ばずにはいられません。自分の力を越えたものに頼らざるを得ないのです。そういった煩悶や恐れ、それらが宗教心の根源です。苦しみ悩み、混乱するこの自分を「幸せにして下さい」「落ち着かせてください」「平安にしてください」と切に願う気持ちが根源にあるわけです。つまり、宗教心は、日頃何も困ったことが起こらなければ、その人の表面にあまり出て来ないでしょうが、実はその心の深層、その人の人格の中枢を支えているというわけです。人格を形づくる核となる部分、その人の価値観や考え方の根本になる宗教が、この世とかけ離れているはずがありません。むしろ、この世を生きる一人一人の心といういちばん大切な部署を担って、社会の日常を支えていると思うわけです。
③なぜ宗教戦争がおこるのか?
熊本で非戦平和を願う宗教者の会を立ち上げたといいましたが、メンバーは仏教のいろいろな宗派のお坊様、門徒の方々、キリスト教もいろいろな宗派の牧師や信徒の方々、イスラム教の信者の方々も参加していました。「戦争は命の問題」だと言って一致できたわけです。世界の宗教人口の比率は、キリスト教が約32.0%、イスラム教が23%、仏教が7%なんですね。つまり、世界の62%を占める宗教を信じる方々が集まったわけですが、いずれにも、「殺してはならない」という教えがあり、その教えをとても大切にしているのです。ですから、各宗教が「殺してはならない」という絶対的な真理を、ほんとうに教えているのであれば、世界に戦争は起こらないはずです。
つまり、宗教が宗教としての役割を果たしていない、と言えます。もっと厳しく言えば、宗教が本来の目的を誤り、狭義の政治政策等の相対的な事柄にのめり込んだが為、政治に利用されているということでしょう。繰り返しますが、宗教とは信じる者を整える事、人がよく生きられるよう、人としてあるべき姿、姿勢、言動をとれるよう、教え導く真理に基づくものです。戦争とは真逆の世界を求めるわけですから、戦争に賛成したり、加担する宗教は宗教と言えません。私はそう思います。
④今の政治状況に対し思うこと。
人間とは、人と人の間で生きるから人間であり、必然的に社会を形成します。政治とは、その社会をより良い形にしていくための仕組みですよね。となると、一人一人の人間に求められることは、他者への配慮です。聖書の中で、最も大切な教えは何かという問いに対し、イエス・キリストはこう語っています。「最も大切な教えは、まず、あなたの神を愛せよ。次に、自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ」の二つであり、それを実行しなさいといいました。「自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ」とは意味深い言葉です。自分を愛せないのにどうして隣人を愛せるか、自分が分からなければ、当然隣人など分からないぞということです。隣人が分からなければ社会は崩壊します。まずは一人一人がじっくりと自分に向きあうことが大切です。
安保法制(戦争法)が強行に通されてしまい、戦争に巻き込まれる可能性を帯びた現実世界を生きる私たち、一刻も早く目覚めてご自分を発見して頂きたい。この危機的状況の中で、あなたの宗教が本物か否かを吟味してほしい。そして、本物だと思うのであるなら、その教えに忠実に従い、自らを整えて社会を支えて頂きたい。
年配者は経験から学び、先を洞察する力を持ちますが、若者には経験がありません。しかし、この政治状況の中でSEALD’sなど若者たちが立ち上がりました。彼らの力は想像力です。他人ごとではなく、自分の事として受け止める、つまり真剣に自分だったらどうするかと自分に向きあい、自分を知ったからこそ、周りが、先が見えてきたのです。「自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ」です。自分の命を愛しく思う者は、戦争には加担できません。彼らの姿に学ぶべきです。

音声

RSS取得

MP3ファイルの再生/ダウンロード