あの日の授業 ―新しい憲法の話― 詩:笠木透 曲:安川誠
1
あの日の先生は 輝いてみえた
大きな声で教科書を 読んで下さった
ほとんど何も 分からなかったけれど
心に刻まれた あの日の授業
~語り~
「そこで、今度の憲法では日本の国が、けっして二度と戦争をしないようにと、二つのことをきめました。
その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさい持たないということです。
これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。『放棄』とは『すててしまう』ということです。しかしみなさんは、決して心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国より先に行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。」
2
あの日の先生は 熱つぽかった
これだけは決して 忘れてはいかんぞ
あわをふいて ほえたり叫んだり
心に刻まれた あの日の授業
~語り~
「もう一つは、よその国と争いごとがおこったとき、決して戦争によって、相手をまかして、自分のいいぶんをとおそうとしないということを決めたのです。おだやかに相談をして、決まりをつけようというのです。
なぜならば、いくさをしかけることは、結局自分の国をほろぼすようなはめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、国の力で相手をおどすようなことは、いっさいしないことに決めたのです。これを戦争の放棄というのです。
そうして、よその国となかよくして、世界中の国がよい友だちになってくれるようにすれば日本の国は、さかえてゆけるのです」
3
あの日の先生は 涙ぐんでいた
教え子を戦場へ 送ってしまった
自らをせめて おられたのだろう
今ごろ分かった あの日の授業
4
あの日の先生は 輝いてみえた
大きな声で教科書を 読んで下さった
ほとんど何も 分からなかったけれど
心に刻まれた あの日の授業