出演者情報
パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
野村正樹
パートナー) 橋本沙抽里
京都市中京区にある老舗旅館「NISHIYAMA RYOKAN」の和室客室。
老舗旅館の良さを生かしながら、ホテル形式での運営を織り交ぜた、
現代型旅館とも言うべきスタイルで、多くの観光客の人気を集めている。
そんな「NISHIYAMA RYOKAN」のリニューアルを通じて、再考することと
なった「床座式」の良さ。そのひとつめの特長は、視点の低さと、そこか
ら生じる広さと落ち着く感覚である。もともと和室空間は、私たちが床に
座った状態でその姿が美しく見えるように、計画されている。床の間の高
さや、障子の寸法、天井の高さに至るまで、床に座した時に調和がとれる
よう工夫が重ねられている。
その寸法を丁寧に研究することにより、小さな座敷ではあるが、居心地の
いいバランスと広がりのある室内環境を構築することができた。
また、居間用途と就寝用途を兼用できるといった、その柔軟な可変性も
「床座式」の良さとして挙げられる。限られたスペースを有効に活用する
といった点において「椅子座式」と比べて空間の自由度は高く、その用途
に応じて、食卓をたたむ・座布団を出すなど、素早く部屋の設えを整える
ことが可能であることも特徴的である。
私自身、普段意識をすることがなかった、座敷生活の心地よさ。
先人の知恵を改めて再認識することのできた。