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放送日時 2015-09-11

2015-9-11OA『京の伝統産業の新しいかたち「西陣アート&クラフトセンター 」』

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2015-09-11 13:15

出演者情報

パーソナリティ)ローバー都市建築事務所
        野村正樹

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「きょうと空間創生術99」でもご紹介した、京都市上京区にある通称「堀川団地」
昭和25年から28年にかけて府住宅協会(現府住宅供給公社)により建設された、
1階部分が店舗、2.3階部分が住宅となっている鉄筋コンクリート造りの公営住宅である。
堀川通りの中立売通り-椹木町通り間の西側に合計6棟の「堀川団地」が建設されているが、
写真はその最北棟にあたる「上長者町団地」昭和28年建造の12の店舗と24の住宅を持つ3階建ての建物。
既に保存活用が決まっている「出水団地第1棟」「出水団地第2 棟」については昨年耐震改修工事が完了し、
新たな再生への取り組みがはじめられている。
この「上長者町団地」は解体が決定されており、新たに「西陣アート&クラフトセンター(仮称)」
が建設される予定となっている。府の資料によると平成30(2018)年の開館を目指して準備が進められ、
現在その整備運営計画の策定が進められている。堀川団地全体のにぎわ い創出・まちづくりを目指しなが
ら伝統産業の新時代を開く「職・商・交・住」の拠点として新しく整備するもので、地域交流スペースを
はじめ、ギャラリー・ショップやカフェに至るまで、様々な府民のための施設が計画されている。
他に工房付き住宅やSOHOアトリエ,ワークショップスタジオ等、伝統産業支援のためのスペースも用意され
京の伝統産業の新しいかたちがこの「西陣アート&クラフトセンター(仮称)」から発信される数年後が
今から楽しみである。

その2 「堀川京極と下駄履き住宅」

上京区にある堀川商店街。現在、堀川通りの西側には上長者町通りから下立売通りまでアーケードがある。
この商店街一帯は昭和初期まで「堀川京極」と呼ばれ300軒以上の商店が軒を連ねる大きな繁華街の一画で
あった。鉄骨アーチの全蓋(ぜんがい)テントと電気照明に私費舗装を備え、東の「新京極」とならぶ
市内有数の繁華街・歓楽街として 栄えていた。二つの映画館と三つの銀行、二つの市場を中心にさまざま
な種類の商店・飲食店が建ち並び、活気あふれるその姿はさながら不夜城 のようであったといわれている。
 現在のように、堀川通りが大きな道幅となったのは第二次世界大戦末期の昭和20(1945)年春のこと。
空襲による延焼を防ぐ目的 で京都府により強制疎開が実施され、御池通・五条通とともに学徒動員による
道路拡幅工事が実施されたのである。繁栄を極めた「堀川京極」も数日にしてその姿を消すことになった。

 そんな堀川商店街の中核には現在、通称「堀川団地」と呼ばれる6棟の鉄筋コンクリート造りの店舗付き
集合住宅がある。戦後、強制疎開によって家や商店を失った元の住人のために京都府住宅協会
(現・京都府住宅供給公社)が昭和25年から28年にかけて建設した3階建ての公営住宅である。
広い廊下と庭のついた近代的な団地は日本で初めての「下駄履き住宅」(1階が商店・事務所 等、
その上層階が住居となっている住宅)ということもあり、当時全国から多数の見学者が訪れたそうである。

 あれから約60年。近代的であった総戸数160戸の「下駄履き住宅」も老朽化が進み、活用が議論され始め
ている。これからの京都にとっ て、ふさわしい空間創生であってほしいと願うものである。