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放送日時 2016-02-05

2016-2-5OA 「二畳台目に広がる無限の世界」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2016-02-05 13:15

出演者情報

お話) 株式会社ローバー都市建築事務所 
     野村正樹

音声

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「二畳台目に広がる無限の世界」

先日、京都市中京区にある、一軒の茶室を訪れる機会に恵まれた。
釜座二条を北 に進むと東側にある掘内家(ほりのうちけ)。
堀内家は代々表千家の宗匠を務 める茶家であり、内には「長生庵(ちょうせいあん)」という
二畳台目の茶室 が備えられている。
現在の地に、堀内家が江戸より居を構えたのは、宝永5年(1708)の大火の後と 考えられている。
このあたりは平安遷都前の旧鴨川(小川通付近) に近く、北 の千家から南の藪内家に至る名水の
並びの内にあり近くには滋野井も存在して いる。約80坪の敷地の中には茶室と路地が巧みに配置され、
他にも「無着軒」 「半桂」という茶室が建てられている。北西隅にある長屋門形式の門構えをくぐり、
左手にある供待をみながら石畳を進んでいくと、「長生庵」の玄関へとた どり着く。
現在の「長生庵」は明治2年(1869)の建造であり、蛤御門の変によ る消失後に再建されたものである。
二畳台目・下座床の標準的なその間取りは利休好みの典型的な形であり、床柱には赤松の皮付丸太が使用
されている。床框には北山丸太、落し掛けには 赤杉材 がそれぞれ使用されており、全体として穏やかな
印象を受ける床の間のしつらえ となっている。
天井に目をやると、にじり口上が化粧屋根裏の駆け込み天井、床前が板張りの平天井、手前座が蒲の落天井
と全体を3つの天井で構成する意匠となって いる。 天井の高さにもそれぞれに高低があり全体として、
広がりのある侘びた空間と なっている。窓は、手前座の風呂先窓、にじり口上の連子窓、西面 大小の二つ
の下地窓によって自然光が取り入れられ、居心地のいい柔らかな光を感じること ができる。
三畳にも満たない二畳台目の、茶室空間。こじんまりとしたその世界のなかに、 無限の広がりを感じること
のできた豊かな時間であった。