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放送日時 2016-07-15

2016-7-15OA 「格子に感じる先人の知恵」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2016-07-15 13:15

格子に感じる先人の知恵

 先日、山科にある、1軒の和風住宅の再生をさせていただく機会に恵まれた。
東山の山裾に位置する閑 静な住宅地の中にあり、周りの緑や風景ともよく調和のとれた、
美しい住宅であった。長年、この場所に住まわれてきたクライアントであったが、家族
構成やライフスタイルの変化により、更に快適な住まいへの改装を希望されていた。

通風と採光を向上させるために、建物の一部を除却することにより、開放的な庭スペース
を確保すると共に、南側の日だま りスペースにタイル張りのリビング空間を計画する等、
再び始まる新しい暮らしを快適に過ごしていただけるよう、全体的に 工夫を凝らした。

写真は、格子によるスクリーンを計画した玄関ホール部分。ライトアップされた細めの格子
が、パブリックスペースとプラ イベートスペースを緩やかに区切ると共に、デザインのア
クセントを形成している。

京町家に代表されるように、格子は和風のデザインを語る上で、欠かせないエレメント
(構成要素)となっているが、多く は外部空間において使用されることが多い。
空間を区切ることのできるひとつの大きな壁面でありながら、採光と通風を確保 し、同時に
進入と視界を制御できることがその大きな特徴である。特に、京都においては、格子は独自
の進化をとげ、親子格 子や板子格子・細目格子など、さまざまな種類の格子が考案されてきた。

いわば、先人たちの智恵の蓄積ともいうべき豊かな工夫が、格子にはこめられている。
現代においても、その意味合いを再 考し、更なる工夫を格子に加えていくことにより、大事な
伝統を伝えていきたいと、改めて感じることのできたプロジェクト であった。

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