出演者情報
パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
野村正樹
パートナー) 橋本沙抽里
中京区高倉通三条上ル、京都文化博物館の1階部分には「ろうじ店舗」という江戸時代末期の京町家の
外観を復元した2本の路地がある。高倉通側の路地には、京料理などの飲食店が入り、内側の路地には、
京都の伝統工芸品や土産物を販売する店がずらりと並んでいる。そんな「ろうじ店舗」の表構えを構成する
格子や壁は、過去の文献や市内に現存する町家をもとに忠実に復元され、糸屋格子や仕舞屋(しもたや)
格子の他様々な種類の千本格子(京格子)をここでは一度にみることができる。他にも、虫籠窓や与力窓、
板壁や白壁、ばったり床几や暖簾なども復元され、幕末の雰囲気をよくあらわしている。
そんな折、先日訪れた、小川通りの京料理仕出し店「伊勢善」。
聞けば、「ろうじ店舗」の麩屋格子は「伊勢善」の格子を再現しているとのこと。麩屋格子とは、麩屋や湯葉
屋・豆腐屋によく見られる格子のデザインであり、濡れに強い太い格子が特徴的である。今もこの店には、
椹木町にあった「上の店(かみのたな)」市場で使用されていた安政年間(1854-1859)の鑑札が現存して
おり、その歴史の深さを今に伝える。
京都中央卸売市場が出来るまでは京都には三つの店 (たな)=市場= があり、それぞれ「上の店」「中の店」
「下の店」 と呼ばれていた。安土桃山時代より栄えた「上の店」は椹木町通の西洞院から堀川にかけて開か
れ、御所における日々の供御を欠かさぬようにと、大正の末頃まで京都最大の生鮮食品の市場として賑わ
っていた。ちなみに、中の店は今の錦小路市場、下の店は東山区問屋町通である。
写真は、「伊勢善」の料理場部分より麩屋格子を眺めたところ。出格子の内側には、「水場」 「七輪場」
等の作業台が据えられ水仕事がよくできるように工夫されている。格子の内部には「無双締まり」という採光
と通風を自在に調節できるスライド式の内格子が備え付けられ、西日を上手く板場に採り入れている。
写真にも写って下さっている六代目は大正9年生まれの86才。使い込まれた包丁とまな板で、”ぐじ“(甘鯛)
を見事に調理する手さばきは今もなお健在である。
音声
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