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放送日時 2019-06-14

2019-6-14OA 「松花堂の小宇宙的空間」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2019-06-14 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
             野村正樹

パートナー)  藤田瞳 

音声

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江戸時代初期の寛永年間(1624-1644)は、日本文化にとっては実に

成熟した時代であった。「桂離宮」や「二条城」「日光廟」といった建築

物も建立され、あらゆる階層に優れた、日本文化が誕生した。その中

でも、本阿弥光悦と並び「寛永の三筆」として活躍したのが松花堂昭乗

である。書画のみならず、茶の湯や和歌にも秀で、数多くの文化人とも

交流の深かった、松花堂昭乗は当時の文化人の中でも、特に異彩を

はなつ人物であったといわれている。

石清水八幡宮の僧侶でもあった、昭乗は、寛永14年(1637)都に近い

山城男山に、松花堂と称する庵をつくり隠居生活を始める。

わずか一丈(約3m)四方という大きさの中に建てられたこの方丈の草

堂は、さまざまな要素が複雑に組み合わされ、簡素な小さい草庵の形

にありながら、華麗な書院を圧縮したような小宇宙的空間となっている。

また松花堂昭乗は田の字型農家の種子入れを小物入れとして愛用し

ていた。そして昭和初期、「吉兆」創業者の湯木貞一がこの小物入れ

を改良し、料理を収めて世に広めたのが「松花堂弁当」の始まりである。

日常の用を、芸術にまで高めた松花堂。400年の時を超えて、今もな

お、その風雅を現在に伝えている。