出演者情報
パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
野村正樹
パートナー) 藤田瞳
古都京都の美しいまちなみを、次代へつないでいくために、京都市景観政策にお いては、建築物の高さや
形の他に、色彩についても一定の制限が加えられてい る。原則として、自然景観や歴史的街並みと調和す
る色彩を使用することによ り、京都の優れた都市景観を保全・形成していこうというねらいがある。
「街の色研究会・京都」が行った「街のイメージ色 三都物語」という調査のな かで、興味深い内容が
ある。京都・大阪・神戸、それぞれの都における「街のイ メージ色」をアンケートによって、調査したも
のである。その結果によると、神 戸のイメージ色は「白」。大阪のイメージ色は「青」。そして京都のイ
メージ色 は「朱」という回答が多かったのである。以外に感じる方も多いのではないだろ うか。京都の色
というと、瓦の色や、聚楽色、漆喰等なんとなくそんなイメージ を抱きそうなものであるが、全国的には、
鳥居に象徴される朱色が人々の京都イ メージ色と感じる人が多数派を占めるのである。
古来より、朱色は、魔力に対抗する色ともされていて、古代の宮殿や神社仏閣に 多く用いられてきた。
朱の原材料は水銀(丹)であり、木材の防腐剤としての効 果があるため、神社を初めとする様々な木造建
築に使用されてきたのである。そ して、やや黄を帯びた赤色である朱色は、見ていると人間の脳にリラッ
クス効果 があるとされ、深く先人の潜在意識に影響している。それが、今日まで受け継が れ、朱塗りの
鳥居に象徴されるような、「京都のイメージ色」となっているので ある。現在でも工事現場の鉄骨が赤い
色に塗装されているのは、その防腐効果か ら鉛丹という朱の一種が使用されているのも興味深い。
日本の伝統美を再発見して、先人の叡智を学ぶ。そんな「温故知新」の精神が、 現代にも必要なのでは
ないだろうか。