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放送日時 2018-11-07

2018-11-9OA 「二畳台目に広がる世界」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2018-11-09 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
             野村正樹

パートナー)  橋本沙抽里

先日、京都市中京区にある、一軒の茶室を訪れる機会に恵まれた。

釜座二条を北に進むと東側にある掘内家。堀内家は代々表千家の宗匠を務める茶家であり、

内には、「長生庵(ちょうせいあん)」という二畳台目の茶室を備えている。

現在の地に、堀内家が江戸より居を構えたのは、宝永5(1708)年の大火の後と考えられている。

このあたりは平安遷都前の旧鴨川(小川通付近)に近く、北の千家から南の藪内家に至る名水の

並びの内にあり、近くには滋野井も存在している。約300平方メートルの敷地の中には茶室と路地が

巧みに配置され、他にも「無着軒」「半桂」という茶室が建てられている。

北西隅にある長屋門形式の門構えをくぐり、左手にある供待をみながら石畳を進んでいくと、長生庵

の玄関へとたどり着く。現在の長生庵は明治2(1869)年の建造であり、蛤御門の変による消失後に

再建されたものである。

二畳台目・下座床の標準的なその間取りは利休好みの典型的な形であり、床柱には赤松の皮付丸太

が使用されている。床框(がまち)には北山丸太、落し掛けには赤杉材がそれぞれ使用されており、

全体として穏やかな印象を受ける床の間のしつらえとなっている。

天井に目をやると、にじり口上が化粧屋根裏の駆け込み天井、床前が板張りの平天井、手前座が蒲の

落天井と全体を3つの天井で構成する意匠となっている。

天井の高さにもそれぞれに高低があり全体として、広がりのある侘びた空間となっている。窓は、手前座

の風呂先窓、にじり口上の連子窓、西面大小の二つの下地窓によって自然光が取り入れられ、居心地

のいい柔らかな光を感じることができる。

三畳にも満たない二畳台目の、茶室空間。こじんまりとしたその世界のなかに、無限の広がりを感じる

ことのできた豊かな時間であった。

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