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放送日時 2015-12-17

2015-12-18OA 「彰栄館の鐘の音」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2015-12-18 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
                     野村正樹
   

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同志社今出川キャンパスには、5つの重要文化財を含む多くの赤煉瓦建築が存在する。
それらの中でも最初の校舎が明治17年 (1884)に竣工した「彰栄館」=写真=である。
この彰栄館は、同志社の歴史を語る上で最も重要な建物でもあり、京都市内 に現存する
煉瓦建築物では最古のものだ。中央正面の時計台付の鐘塔に特徴がある「アメリカンゴシック」
様式の美しい建物で、 当時、宣教師でもあったD・C・グリーンの設計による。

煉瓦積の外壁は「イギリス積」をアレンジした、長手積み4段、小口積み1段を繰り返すいわゆる
「アメリカ積」で積まれてお り、ランセット・アーチ(尖頭アーチ)と白い花崗岩のコーナー・
ストーンがアメリカンゴシックの特徴をよくあらわしている。 実はこの彰栄館、現在は南(写真左手)
を玄関のようにして建っているように見えるのであるが、もともとは、東側(写真右手) が正面玄関
であると考えられる。内部の空間構成を解析すると、その正面性はより顕著となる。
1951年の新彰栄館増築に伴 い、シンメトリー(左右対称形)であったファサード(正面外観)構成が
崩れてしまい、現在の南玄関風外観を形成するに至っ た。

時計台の部分には、明治20年(1887)セス・トーマス社製の大時計が4面に据えられ、一刻も休まず時
を刻み続けている。 また、毎朝の礼拝を告げる鐘の音も、同じく決まった時刻に、120年間、今日まで
とぎれることなく人の手により鳴らされ続け ている。明治時代、その鐘の音は現在のJR京都駅付近
まで聞こえたといい、雨の日でも戦争中も、どんなときでも同志社生徒の 手により、突かれ続けてきた。
鐘を鳴らす生徒は司鐘生(通称:ベルマン)と呼ばれ、休日でも毎朝7:50には鐘を鳴らし学内公募の生徒
が大役を務めている。そんなベルマンにまつわる逸話が、同志社七不思議のひとつとして、いまも語り継
がれてい る。その年の鐘つき役に選ばれた学生が重病にかかりどうしても鐘を突くことができない。
代役の学生が鐘を打とうとしたときに 鐘がひとりでに鳴り出した。
同時に重病中の学生は天に召されたというもの。彰栄の鐘を見るたび、そんな話を思い出すのである。