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放送日時 2016-03-03

2016-3-4OA 「石塀小路の町家はなぜ高台に!?」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2016-03-04 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
                   野村 正樹

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祇園の 奥座敷として、また最近は観光スポットとしても注目を集めている京都東山「石塀小路」。

美しい石塀が立 ち並ぶこの路地空間は、きょうと空間創生術40回でも紹介したとおり、国の重要

伝統的建造物保存地区に も指定され、その保存活用が図られている。

先日そんな「石塀小路」の石塀を調査する機会に恵まれた。石畳の街路に沿って整然と積まれた

石塀は大別 して、方形の石材を積み上げて築造された下半分の”石垣”部分と、自然石を使用して

築造された上半分 の”石塀”部分とに分けられている。

この石垣部分で形成された下半分の高台の上に風情ある町家が建設さ れ、急な階段で玄関にア

プローチする計画となっている。

なぜ、わざわざ使いにくい高台の上に町家を建造するのか? 測量助手であったアメリカ人研修生

は素朴な 疑問を私に投げかけた。

石塀小路の歴史は以外に新しく、現在のようなかたちに整備されたのは、明治末期から大正時代に

かけての ことである。元々このあたり一帯は、圓徳院の庭園であったが、それを、明治時代になって

当時製茶販売で 富をなした上村恒次郎が譲り受け、賃貸用の分譲宅地として整備を進めたのが、

現在の石塀小路の始まりで ある。

ではどうして、一段高い場所に宅地を計画したのであろうか。

現在は暗渠(あんきょ)となっている東山から流れる菊渓(きくたに)川。この菊渓川は暴れ川として有名

であり、雨季になると鉄砲水を周辺に見舞っていた。現在残る下河原の地名はその名残である。

上村は元々 あった土地の傾斜を利用しながら、石垣を積み洪水への備えとしたのである。

目線に近い高さまで積み上げられた石塀は、適度なプライバシーを保ちながら美しい景観を形成して

いる。 防災対策と風情ある町並みを両立させた先人たちの智恵を私たちも継承していきたいものである。