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放送日時 2016-03-07

2016-3-11OA 「古民家再生に映す京の美意識」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2016-03-11 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
           野村正樹さん

「古民家再生に映す京の美意識」

先日、一軒の古民家を改装する機会に恵まれた。奈良県王寺町にあるその木造建 築は、

先祖代々より大切に受け継がれ、築160年以上、江戸時代末期 の建造と伝 えられてる。

過去にも改修がなされているものの、そのしっかりとした大胆な木 組みは古民家特有の

力強さを感じさせる剛健な造りの建物で あった。

中央に巾2 間の大きな通り土間を持ち、両側に居住空間と炊事空間がある典型的な大和地方

の古民家である。庭先には牛小屋も残されており美しい古民家の"かたち"が 残されていた。

京町家の再生を数多く手がける私達にあって、このような古民家の再生は共通す る部分も多く、

今回の改修においては、京の美要素を現代的に加えるこ とに よって魅力ある空間の創出を考

えることとなったのである。一般的に、京の美意 識というものは、数寄屋造りの茶室や千本格子に

見られるように 飾り気がな くシンプルかつ質素な要素のなかに美を感じることが多いとされている。

ま た、建築における部材においても、より細く繊細に意匠を見せ ることに主眼を 置き、太く大きな

部材を使用しないこともその特徴とされている。たとえば、地 方の床の間は床柱が太いほど立派で

高級であるとされて いるのに対して、京町 家における床の間には、細くて木目の美しい床柱が使

用されているのも、こうし た京の美意識からくるものである。

写真は、新しく生まれ変わった寝室空間。中庭に面して、堀り込み式の書斎コー ナーを設置。

全体をシンプルに仕上げるとともに、デザインのアクセン トとし て、茶室建築でよく使用される

「下地窓」を計画している。天井の網代の表情と ともに全体として落ち着きのある寝室空間を

創出している。飾り気のない豊かな美しい空間を実現することのできた印象的なプロジェクトと なった。