ここから本文です。

放送日時 2016-07-08

2016-7-8OA 「広縁空間を憩いの空間に」

番組名:KYOTO space fountain

投稿日時 2016-07-08 13:15

出演者情報

パーソナリティ) ローバー都市建築事務所
           代表取締役 野村正樹

音声

RSS取得

MP3ファイルの再生/ダウンロード

「広縁空間を憩いの空間に」

先日、下京区堀川松原にある京町家を改装した「小規模多機能型居宅介護施設 松原のぞみの郷(さと)」
を訪問する機会に恵まれた。「小規模多機能型居宅介護施設」とは、これまで「施設」で行ってきた高齢
者介護を「在宅」で行うための支援施設であり、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができ
るよう、さまざまな工夫がなされている。
「通い(デイサービス)」「泊まり(ショートステイ)」「訪問(ヘルパー派遣)」など多彩な介護支援
機能を、小規模かつ地域密着型として整備することにより、家庭的な環境の下で日常生活上の支援や機能
訓練を効果的に行うことのできる施設となっている。
2007年(平成19年)に開業したこの施設は、当時築90年の京町家を再生したプロジェクトであり「おうち
に帰ってきたような安らぎ」「町家のぬくもりを肌で感じる」を設計コンセプトとして計画を行った。
=写真=は、「松原のぞみの郷」の広縁部分。縁側の拡張工事を行い、光と風を十分に楽しめる場所とし
床板には元の京町家で使用されていた貴重な長さ十六・五尺(5㍍)の松の一枚板を転用している。
設計当初は単なる日だまり空間として計画を行ったこの広縁部分には、現在ベンチと物干しと機能訓練用の
椅子が置かれ、施設利用者のための憩いの空間として有効に活用されている。日本庭園も綺麗に手入れが行
き届いており、緑と風を感じることのできる居心地のいいスペースとなっている。
京町家の風情のある介護施設として開業当初より地域の方に愛され、9年を経た今も多くの利用者で賑わっ
ている「松原のぞみの郷」。
お年寄りのたくさんの笑顔に囲まれながら、介護施設のこれからのありかたを考えるいい機会となった。